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予定は未定。

【オッペンハイマー】最近見た映画の辛口感想【デデデデ/名探偵コナン】

 

客観的事実など存在しない。あるのは自分の目を通して見た事実だけである

ヴェルナー・ハイゼンベルグ

2024年春は映画が豊作です、辛口で感想をまとめます。

 

オッペンハイマー

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クリストファー・ノーランの映画において真に注目すべきは、映像ではなく”音”だと思っています。

たとえば前作『TENET』は特にそれが顕著で、オペラハウスの爆音とテロ組織による銃撃戦で映画が始まります。このシーンで流れる音楽と銃声は耳がぶっ壊れるほどの音圧なのですが、その分とんでもない迫力で強烈に印象に残っています。私はこのシーンが本当に好きで、ここをもういちど見たくて映画館でTENETを2回見ました。

一方で、オッペンハイマーは圧倒的にこの"音"が弱いように感じました。映画は雨のなか佇むオッペンハイマー本人の視点から始まります。私は、ノーランなら最初から大爆発の爆音で観客を痺れさせるものだと確信していたので、冒頭からいきなり出鼻を挫かれました。この時点で嫌な予感はしていたのですが、その後は、オッペンハイマーの学生時代、研究者時代、不倫相手とのロマンス、赤狩り、尋問等、映像的につまらないシーンが延々と続き、トリニティ実験に移るまで本当に単調なドラマを見ている気分になります。もちろんこの映画はオッペンハイマーの人生を忠実に描いたものであり、そして誰の人生でもそのほとんどは取るに足らない退屈なシーンの連続であることは理解しているつもりですが、映画としてそれが面白いとは到底思えません。しかも3時間ありますからね、この映画。

しかし最大の見どころの爆発シーンはやはり見ごたえがありました(当然、爆音です)。ただ爆発シーンまで派手な映像をもったいぶるせいで、いざ見てみるとやや肩透かしというか、これで終わりか…感が強く、結局最後に残ったのはもっと派手な映像が見たかったという失望と、3時間分の疲労感だけでした。さらに言えば、個人的にはなぜか爆発シーンよりV2ロケットの回想シーンのほうが印象に残っています。

映画の構成に関して言うと、モノクロ映像を利用して時系列をシャッフルするノーランの手法はうまくいっているとは言い難いです。例えば『メメント』では切り刻まれた時間軸とモノクロ映像、カラー映像を利用することで主人公の前向性健忘を表現していましたが、オッペンハイマーで行われるシャッフルにはその表現すべきテーマがないように感じます。もちろんストロースとオッペンハイマーの視点を分けるうえでモノクロ映像を使う必要はあったかもしれません。しかし伝記映画を3つの時系列で並列して語ることにいったい何の意味があるのでしょうか。映像に複雑性を求めるのはノーランの悪い癖だと思います。これがやりたいなら初めからSFを撮ればいいし、むしろ多くのファンはノーランに伝記映画よりSFを撮ってほしいと思っているはずです。

また3時間は純粋に長いです。後半の赤狩りのシーンは長いだけで退屈なのでもっと短くすべきだし、ほんとうに映像的な面白みが一切なかったです。ただラストで核分裂の計算の伏線を回収するシーンは印象的でよかったと思います。

あと一つ思ったのが、オッペンハイマーを神の火を盗んだプロメテウスに重ね合わせて神ではなく歴史に裁かれた感じを出していましたが、実際は権力闘争に敗れただけであり、別に原爆を作ったこと自体を糾弾されたわけではないのでこの喩えは適切ではないように思いました。

オッペンハイマーに関して言えることはこのくらいです。ダンケルク見たときにも思いましたが、ノーランが歴史映画作ってもたいして面白くないですよね。ノーラン監督の次回作がSFであることに期待します。それまで私はインターステラーでも見返して待ちます。

 

 

デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション前編

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私は浅野いにおのファンで作品はすべて読んでいるのですが、残念ながらデデデデはあまり好きではない。というより、かなり嫌いです。

というのも、『おやすみプンプン』を読めばわかるように浅野いにおは人間の悪意を描く天才なんですよね。その一方で、こと政治の話となると全方位を冷笑する彼のスタンスは本当に悪意に満ちていて見ていられない。

私は安全な場所から社会を冷笑(鋭い視点だと本人は思っているかもしれませんが)するのは本当に最低の行為だと思っています。(実際に変えられるかは別として)社会を変えていくのは冷笑ではなく、問題の解決へ向けた地道な努力であることは明らかです。そのため、それを冷笑して露悪的に描くのは本当に最悪だし、浅学だし、悲しいことだと思います。

もちろん、デデデデでは連帯の難しさを表現している部分もあり、これが社会の現実であると言われればその通りなのですが、政治というセンシティブなテーマをこのように揶揄する形で扱うのはやはりあまりにも下品だと思います。

まあそんなに深く考えず、若者に大人気のikuraとあのちゃんの百合映画だと思えばいいのかもしれません。冷笑映画には適した見方だし、後編はそのように観るつもりです。

 

しかし映像に関して言えば相当にリッチでした。開幕のミリタリー要素もそうですし、キャラデザ等も原作の雰囲気を損なうことなく、完璧に映像化できていたと思います。ただ『第9地区』のオマージュだとは思いますが、無抵抗なエイリアンを自衛隊が銃で殺処分するシーンなどは割と悪趣味だと思いました。ほかにも人間の悪意を描いた悪趣味なシーンが多々あります。

声優に関してもよかったと思います。メインキャラをYOASOBIのikuraとあのちゃんが担当することもあり、若干の解釈違いと一抹の不安がありましたが、実際はプロと遜色ないくらい上手かったです。ただ、私は個人的にあのちゃんの声が好きではないのでその部分が少し残念でした。エンディングの曲もあのちゃんが歌っていました。

後半は主題歌をYOASOBIが担当するようです、エンディングも映画オリジナルになるらしく折角なので見に行こうと思います。

 

 

名探偵コナン 100万ドルの五稜星(ネタバレなし)

コナン映画としては平均的な完成度ですが、普通に面白かったです。

前年の『名探偵コナン 黒鉄の魚影』は全体的に稚拙というかトリックが本当にしょうもなく、ただのキャラ映画(哀コカップリング厨向け)という印象が強かったのですが、今回は謎解き要素とアクションのバランスがちょうどよく前年よりは面白かったと思います。

第一に、私がコナンに求めるのはキャラよりも謎解きです。もちろん一般大衆がコナンに対して求めるのはキャラとアクションと安定感であり、もはや謎解き要素がかつてほど求められていないのは明らかですが、本作では例年よりも謎解き部分を真摯にやってくれた印象があり、私個人としては満足しています。

ところでラストシーンの函館山あたりで平次と和葉は私よりかなり年下だという(残酷な)真実に気づいてしまい、彼らのイチャイチャにやや取り乱してしまってその後冷静に鑑賞することができませんでした。しかし本編最後に怪盗キッドの驚愕の真相が明かされ、終わったころにはもうそこしか覚えていないくらいの衝撃を受けたので、これを知るためだけに劇場に行ってみるのもよいかもしれません。

aikoが歌うエンディング曲「相思相愛」はとてもよかったです。去年のスピッツの「美しい鰭」も(本当に)よいですが、やはり恋愛要素の強い映画にはaikoがよく似合います。

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最後に

2024年はアニメ映画の年なので楽しみです