はじめに
夏休みが始まって一週間が経過した。
このブログの読者諸君は夏を満喫しているだろうか。
私はといえば、この一週間のほぼすべての時間をニコニコ動画とyoutube 、小説のプロット作成とイラスト練習、そして積読の消化に費やしている。
傍から見れば日々を怠惰に過ごしてしまっているように見えるかもしれないが、これも無駄に忙しい大学生活で抑圧されていた私の創作意欲を開放するためには必要な時間である。寧ろこうした時間の使い方は、大学で第二外国語の学習に週210分を費やすよりも幾分価値があるということは疑いない。昔から大学生活はよく人生の夏休みに喩えられるものだが、この大学に関して言えば全くそんなことはないのだ。Sセメスターは大量の課題と授業に忙殺され、趣味の時間も十分に取れないほどハードなものだった。
さて、そうはいっても、ようやく待ちに待った夏休みである。私はこの夏に何としても、執筆中のミステリ小説の完成と、イラストの上達、そして積読の消化を達成したい。人生で最も時間に余裕のある大学2年の夏休みは、後悔の無いように存分に味わい尽くすつもりだ。
しかしこれはあくまで私の話であって、結局のところ夏休みの時間の使い方は人それぞれである。新学期に向けて勉学に励むもよし、気ままな一人旅に出るもよし、はたまたアルバイトに精を出すのもよし…。
まあ何であれ、このブログの読者諸君が満足のいく夏を過ごすことができれば幸いである。
さて、私はこの記事を実家のある愛知県から投稿している。
先日私は東京の六畳一間の自室に別れを告げ、実家のある愛知県へと帰省したのだ。
帰省の手段は夜行バスと青春18きっぷの2種類があった。値段的にはどちらも変わらないので、私は青春18きっぷを選んだ。どちらを選んだとしても首と腰が爆発する地獄が待っているが、地獄にも種類があるのだ。私が言えるのは、金に余裕があるなら夜行バスには絶対乗るなということだけである。
ここまで前置きが長くなってしまったが、要するに今回の記事ではこの青春18きっぷを使って在来線で帰省したレポを書く。
今回の在来線で行く東京-名古屋間の旅はかなり過酷なものであった。(主に静岡のせいだが)
しかし、時間に捉われない一人旅は存外楽しいものでもあった。
今回の記事を読んだ人に、その楽しさが少しでも伝われば幸いである。
青春18きっぷ
読者諸君は青春18きっぷを知っているだろうか。知名度自体はとても高いので、実際に利用せずとも名前くらいは聞いたことがある人が多いだろう。
残念ながら私はあまり鉄道に詳しくないため、詳細についてはwikipediaから引用する。
青春18きっぷ(せいしゅんじゅうはちきっぷ)は、旅客鉄道会社全線(JR線)の普通列車、快速列車が12,050円(大人、子供同額)で1日乗り放題を5回利用可能[1]となる、販売および使用期間限定の特別企画乗車券(トクトクきっぷ)である。
実際にはいろいろと細かな制限はあるものの、つまるところJRの乗り放題切符だという認識で問題ない。
詳細はJRの公式HPで確認してほしい。
実は私も青春18きっぷの存在こそは知っていたものの、実際に利用したことはなかった。というのも、愛知は名鉄に支配されているため普通の愛知県民はJR東海を使わないのだ。
しかし、帰省するにあたり東京名古屋間の格安の移動手段ということで、今回初めて利用するに至った次第である。
このチケットは5枚綴りであるため、帰省の往復で2枚使うとしても3枚余ることになる。私はこの余りでまた一人旅に出る予定であるが、使う予定のない人は金券ショップで売ってもよい。余っても割と高値で売れるため、帰省の手段としてはかなりお勧めできるものとなっている。
東海道本線と帰省ルート
東海道本線(とうかいどうほんせん)は、東京都千代田区の東京駅から兵庫県神戸市中央区の神戸駅までを結ぶJRの鉄道路線(幹線)である。このほかに多数の支線を持つ。日本の鉄道路線としては最古であり、明治時代に初めて日本に鉄道が敷設されて以来、日本の鉄道交通・物流の大動脈を担い続けている。 (wikiより)
東海道といえば大半の人は江戸時代の五街道を思い浮かべるだろう。しかし、実は道としての東海道はそれより遥か昔、律令時代に設けられたそうだ。私は特に日本史に詳しいわけではないが、東海道の歴史的背景はなかなか興味深いものである。読者諸君も時間があれば是非見ていただきたい。
なお、江戸時代の東海道と現在の東海道線は必ずしも同じルートを辿っているというわけではないことは注意が必要である。
さて、現在の東海道線であるが、現在の路線図は次のようになっている。(画像はJRとジョルダンから引用)
実際はこれより先の神戸まで路線は繋がっているわけだが、今回はJR東海の範囲までを引用した。
さて、路線図を見てわかる通り東海道本線に乗れば、これだけで愛知まで行けることがわかる。実家の最寄り駅は愛知環状鉄道の駅であるので、青春18きっぷの区間では岡崎まで行けばゴールとなる。
出発地点は東京駅となっている。私の最寄り駅は大塚駅なので、ここまではJR山手線で行くことができる。
また静岡の区間がとても長い上に在来線は各駅停車となっている。なかなか厳しい旅になることが予想されるが、適当な駅で降りて観光できればと考えている。
行き当たりばったりの旅を求めているため、今回は東海道本線に乗る以外は何も計画を立てずに出発することにした。
東海道本線ぶらり途中下車の旅
2022年8月4日 5:37 起床
目が覚めて窓の外を眺めると、前日の天気予報の通り生憎の曇り空だった。
今日は全国的に雨が降ることが予想され、富士山を見たいなとぼんやり考えていた僕は少し残念に思った。
前日の夜には実家に持ち帰るものをリストアップしていたので、荷詰めはすぐに終わった。でも結局ゴミの処分とか、外泊届の提出とかの諸手続きをしていたら、気が付けば7:30を過ぎていた。
本来は7:00頃に寮を出る予定だったけど、まあ行き当たりばったりの旅だし細かいことは気にしない。
出発前に部屋を最終確認したら棚の上にバナナが2本残っていた。
これを放置したら大変なことになりそうだったのでとりあえずカバンに詰めておいた。
7:49 出発
予定より50分ほど遅れてしまったが、無事に寮を出発した。
外泊届を出すときに、管理人さんに「帰省するんですか。お気を付けて。」と言われた。在来線での帰省に気を付ける要素があるのか疑問に思ったが、とりあえず安全にのんびり帰宅しようと思った。
8:02 大塚駅到着
青春18きっぷは前日に購入していたため、今日は駅員さんにスタンプを押してもらうだけだった。初めて使う青春18きっぷだったので少し緊張したが、特に問題なく入場できてホッとした。とりあえずここからは、山手線の東京上野行きに乗って東京駅を目指すことにする。しかしどうやらネットで山手線のルートを調べたところ、この電車で新橋まで行けるらしい。そのため、ここから新橋まで行くことにした。
8:39 新橋駅到着
山手線の東京上野方面は、大学とは逆方面であるので普段は全く使わない。新橋まで行ったこともなかったから、その分より遠く感じた。あとから路線図を見ると、山手線において大塚の反対側にあるのが新橋らしい。どうやら普通に東京駅で乗り換えたほうが早かったようだ。
新橋はサラリーマンの街といわれるだけあって、駅構内はスーツを着た人で溢れかえっていた。このクソ暑い中お勤めご苦労様です、と僕は思った。
ここまで来れば東海道線に乗って、あとはそのまま愛知まで行ける。
初めに何も考えずに乗ろうとした電車が宇都宮行き(反対方向)だったことを抜きにすれば、ここまでの旅路は順調だ。
駅についてしばらく待っていると、東海道線熱海行きの電車がやってきた。おそらく東京発のこの電車には、新橋駅の時点で既にまずまずの乗客がいた。乗車した当初は座れなかったが、品川についたあたりでサラリーマンも減ってようやく座ることができて嬉しかった。ロングシートの座り心地はお世辞にもいいとは言えないが、立ちっぱなしよりはずっとマシだ。
ちなみに電車の右隣はサラリーマンのおじさんだった。ロングシートなのにパソコンを広げて作業していた。そして、それが僕のスペースまで侵食してきて、とても窮屈に感じた。左隣はデカいキャリーバックを持った大学生くらいのカップルだった。ずっと泊まった宿について話しながらイチャイチャしていた。他人の惚気話はできれば聞きたくない。席の両側を彼らに挟まれた僕は、熱海まで続くこのあまりに過酷な環境にもう帰りたくなってしまった。しかし残念ながら、これは既に帰省中なのであった。
電車が茅ヶ崎につく頃には、乗客も減って車内はガラガラになっていた。ちなみに茅ヶ崎駅の発車メロディーはサザンオールスターズの「希望の轍」だった。
夏にこの曲を聴くと、いつも湘南の海岸沿いをドライブしたくなる。
まあ残念ながら僕は普通免許すら持っていないから、これは無理な話なのだけれど。
外は雨が降っていたため、車窓から見える景色はほぼ灰色だった。
小田原のあたりで窓から少し海が見えた。海は雨と風で大荒れだった。晴れていたらおそらく透き通る海が見えただろうと思うと少し残念だが、雨すら楽しむのが一人旅の流儀だ。自分にそう言い聞かせて、雨で濡れた世界を車窓からほんやり眺めているうちに、電車はいつの間にか熱海駅へ到着した。
10:33 熱海駅到着
電車が熱海駅へ到着すると、如何にも鉄道が好きそうな見た目(偏見)の諸兄が、扉が開くやいなやダッシュで乗り換えを行っていた。雨でホームも濡れているし、ベビーカーを押しているファミリーもいるというのに、周りを気にせず危険な行動をする彼らに少しげんなりした。
ここからはJR東海の管轄になるため乗り換えが必要である。しかし見たところによると座席はもう埋まっている。折角なので僕はここで降りて、次の電車が来るまで熱海を少し観光することにした。
熱海駅から出ると、当然かなり雨が降っていた。
熱海といえばビーチが有名だが、生憎の天気である。そのため、僕はネットで調べた熱海の観光地「來宮神社」を訪ねることにした。(來宮[きのみや]と読むらしい。)
神社への道中に熱海商店街があった。ここでは熱海のスイーツを販売していて、大学生のグループやカップルなどで賑わっていた。僕はそもそもそれほど甘いものが好きなわけではないのでここはスルーしたが、夏休みの大学生グループとすれ違うのは少し気まずかった。
熱海駅から來宮神社まではあまりアクセスが良くない。徒歩では20分ほどかかるため、タクシーで行く人も多い。僕はタクシーを使えるほど金がないので、当然雨の中徒歩で向かった。
神社への道は坂が多くて大変だった。
道はまずまず狭いうえに、車がかなり飛ばしていて危なかった。
20分ほど坂道を歩くと、來宮神社に到着した。正直ここまでの道中でかなり疲れたし、駅まで歩いて帰るのも億劫になっていた。おまけに雨で髪の毛までビタビタになってしまい、テンションがかなり下がった。
しかし、不測の事態を楽しむのもまた一人旅の醍醐味である。再び自分にそう言い聞かせて、來宮神社に参拝した。
あまり來宮神社の詳細については知らなかったが、割と有名なパワースポットらしい。
特に來宮神社は境内のクスノキの巨木で知られる。樹齢は2000年以上で、国の天然記念物に指定されているそうだ。
実際に見てみると、確かに巨大なクスノキで自然の力強さを感じた。パワースポットと呼ばれるだけあって、なんとなくパワーをもらったような気がした。雨の中徒歩でここまで来るのは大変だったけど、来てよかったなと思った。
お金がないので、お賽銭はあまり入れたくなかった。しかし、折角神社まで来てパワーをもらったので、1円だけお賽銭を入れた。ちなみに、無事に帰省できるようにお祈りしておいた。
そのほかにもいろいろ写真を撮ったので貼っておく。
帰りも雨の中徒歩で20分かけて熱海駅まで戻った。天気は相変わらず悪かったが、神社でパワーをもらったことで少しは体力が戻ったと思う。
11:34 熱海~静岡
ずぶ濡れで熱海駅に戻ると、ちょうど静岡行きの電車が来ていた。
ピークを過ぎたからか、列車はガラガラだった。
相変わらずロングシートの座席だが、密を避けて乗車できるのはありがたかった。
本来であれば、この先三島駅で降りて観光する予定だった。
しかし熱海で降りてビチャビチャになった上に、静岡の要素にも満足した感があったので、このままどこかで昼飯をとって愛知へ向かうことにした。
途中、興津駅で乗り換えた。
写真からわかるように如何にも田舎っぽい駅で、少しノスタルジックな気分になった。
当初は浜松餃子を食べる予定だったので、浜松まで行くつもりだった。
しかし、電車に乗って静岡グルメを調べているうちに、静岡駅から徒歩5分の「さわやかハンバーグ」が静岡で一番美味いという情報を入手した。
ハンバーグはそれほど好きというわけでもないが、どうせなら静岡グルメの最高峰が食べたいと思い、静岡駅で途中下車することにした。
13:55 静岡駅
静岡駅で降りたのは初めてだった。それでも静岡の中心部というだけあって駅前はそれなりに栄えていた。(当然名古屋のほうが栄えている。)
駅から徒歩5分ほどでにさわやかハンバーグに到着した。人気店舗というだけあって、僕がついたころには既に40分待ちだった。こういうのは待たされれば待たされるほど、提供される料理のハードルが上がるものである。40分も待つからには相当の料理を期待してしまう。
しかし結局、横にあったのMARUZEN & ジュンク堂書店で本を立ち読みしながら時間を潰していたので、意外と待ち時間は一瞬で終わった。
ちなみにこの書店は静岡のくせに割と品ぞろえがよかった。
待ち時間が終わると店内に案内される。外まで漂うハンバーグの匂いがなんとも食欲をそそる。気分はすっかり孤独のグルメである。
テーブルに着くと、まずは水と紙が渡される。実はこの紙はただの下敷きではなく、肉汁とソースが飛ぶのを防ぐ役割があったりする。
メニューが渡されると、いろいろなランチメニューが載っていた。しかしこういう店はまず間違いなく、一番人気の商品が最も美味しい。そのため僕は迷いなく、げんこつハンバーグランチ(ライス付き) 税込み1265円を選択した。
注文の際、店員さんに「肉汁たっぷりに焼き上げますがよろしいでしょうか?」と聞かれた。僕には正直この質問の意味が分からなかった。果たしてハンバーグをパサパサに焼き上げてほしい人など存在するのだろうか。
注文から10分ほどで、アチアチの鉄板とげんこつハンバーグが運ばれてきた。
文字通りげんこつほどのハンバーグを店員さんが目の前で半分に切断し、その断面をアチアチの鉄板に押し付けた。どうやらここで内部に火を通しているようである。
ある程度押し付けたら最後に特製デミグラスソースをかけて完成だ。
鉄板のアチアチ具合はこの動画からもわかるだろう。
正直さわやかハンバーグ舐めてたけど、食ってみたらマジで美味くてニヤニヤしちゃった pic.twitter.com/xnPprCa00z
— マキムラ (@zakozak0) 2022年8月4日
ある程度待ってソースと肉汁が大人しくなるとようやく食べごろである。
ハンバーグ自体はかなり大きく、味への期待も大きくなった。
僕はまずハンバーグを切り分けると、その断面に驚愕した。なんとまだ中が赤いのである。
ミディアム・レアのハンバーグなど前代未聞だ。静岡県民は食中毒を恐れないのだろうか。
おそらく最初に聞かれた「肉汁たっぷり」の真意はミディアム・レアでも大丈夫かということだったのだろう。今になってよく焼きにすればよかったと少し後悔した。
しかし、これが静岡グルメの最高峰である。僕は意を決してこの肉塊を口へ運んだ。
ハンバーグが口に入った瞬間、僕が最初に感じたのは牛肉100%の圧倒的旨味だった。そこからさらに練りこまれたスパイスのピリリとした刺激が、レアの牛肉と絶妙なハーモニーを奏で、さわやか特製デミグラスソースによるベスト・マリアージュを生み出していた。
表面は炭火でハードに焼き上げ、中はむっちり柔らかな状態を保っている。さわやかは、ミディアム・レアというハンバーグ界の禁忌を犯すことで、この禁断の舌触りを演出しているのだ。
普段鶏むね肉しか食べない僕は、この圧倒的な牛肉の暴力を前に一口で完全にKnock Out。完敗である。
本当に美味いものを食べたときは、思わず笑みがこぼれるものだ。
あまりの美味さに打ちのめされた僕は、周りの目をに気にせず店内で一人ニヤニヤしてしまった。
その後も、残りのハンバーグを貪るように食べてしまった。やはり中は赤いままだったが、それでもかまわない。ミディアム・レアでよかったと心から思った。
さわやかハンバーグに行くと、自分の中でハンバーグの概念が変わってしまう。
僕はもうファミレスのパサパサハンバーグを食べたいとは思えないだろう。
しかし、それでも構わないと思えるほど今の僕は満足している。
禁断の静岡グルメ、「さわやかハンバーグ」。
読者諸君も静岡に行った際は是非ご賞味あれ。
16:26 浜松到着
静岡でさわやかステーキに衝撃を受けた僕は静岡駅に戻り、東海道線で浜松を目指した。静岡から浜松までは割と距離はあるものの、車窓からの景色を眺めていたら案外すぐに到着した。途中うとうとした弾みで後頭部を思い切り窓にぶつけ、周りの乗客の視線を一身に集めたりするなどしたが、それ以外は問題なく浜松につくことができた。
浜松からは豊橋行きの電車に乗り換える必要がある。僕は折角なのでそのまま降りて散策することにした。
駅のお土産売り場を見ているとなぜかゆるキャン△の看板があった。どういう繫がりなのだろうか。
僕が浜松で降りたのは、家族へのお土産に名物の浜松餃子を買うためである。本当は東京土産を頼まれていたが、面倒なのでこれでいい。愛知の赤福とは違い、東京にはわざわざ買うようなお土産はないのだ。
浜松餃子はキャベツがたくさん入っているのが特徴らしい。ちなみに浜松餃子は宇都宮餃子と並んで餃子の年間の消費量2トップを争っている。静岡県民は栃木県民をライバル視しているようだが、そんなことは愛知県民の僕からしたら至極どうでもいい話である。
浜松餃子はいっぱい売っていてどれを買うか迷ったが、とりあえず一番近くにあるお土産用の冷凍餃子を買った。後日家で食べたが、結構キャベツ多めで野菜の甘味がして美味しかった。
16:44 浜松駅出発
お土産を買い終えると、東海道線岐阜行きの電車が来ていた。これに乗れば一本で岡崎まで行けるため、ラッキーだった。
車内はなんと贅沢にもクロスシートの座席となっていた。ここまでのロングシートの旅で、腰と尻にダメージを負っていたので、本当に助かった。
ここからは、岡崎までぼんやりしながら座っていた。途中豊橋を過ぎたあたりで、去年の夏は技科大を受けに来たなと、少し懐かしい気持ちになった。まったく時の流れは速いものである。
そんなこんなで、電車は岡崎に到着した。
岡崎から実家の最寄り駅までは愛知環状鉄道に乗っていく。
愛知環状鉄道は所謂第三セクター方式の鉄道事業者で、青春18きっぷは使えない。実家の最寄り駅までは500円ほどの切符が必要だった。東京からここまで2,410円で来れたことを考えると少し高く感じるが、まあ愛知の鉄道はどれも高いので仕方がないだろう。
愛環に乗るのは3年ぶりだった。たしか部活の大会で使ったのが最後だったように思う。
あれから本当に色々なことがあった。
僕は少しは成長しているだろうかと、旅の終わりに柄でもないことを考えたりした。
実家の最寄り駅につくと、もう雨は上がっていた。
東京と比べて空気が澄んでいた。
ほかに何もない田舎だけど、僕はやっぱり地元の空気が好きだと思った。
家族に話したいことも沢山ある。
でもとりあえず今は、無事に帰ってこれてよかったと思う。
そんなことを考えつつ、僕は見慣れた道を帰っていった。
~THE END~
後日談
髪を4月から一回も切っていない上に、雨でしっとりしていたので家族から髪型を笑われた。少し悲しい。まあ夏休みのうちに地元で適当に切ることにする。
もったいないと思って寮から持ち帰ったバナナは、カバンの中でドロドロになっていた。ショック。
東京でのお土産を頼まれていたのに、浜松餃子を買って帰ったことで家族からは案の定文句を言われた。
言い訳をするように、実家に帰ってから「今東京で一番流行ってるお土産?そんなんコロナウイルスに決まってるじゃんw」という渾身のブラックジョークを3回くらい擦ったが、全員苦笑いするだけだった。
どうやら周りには不評なようだった。(少なくとも僕は面白いと思っている)